2024年5月号 そこが聞きたい! インタビュー
暴力団は絶対悪─社会に暴力団を排除する空気が充満している。しかし、彼らには「生活権」を認められないという基本的人権がない。元親分がその不条理を訴える。
阿形充規氏 「社会の不条理を糾す会」代表世話人
昭和14年(1939)東京都出身。大日本朱光会・国民協議会名誉顧問。元住吉会住吉一家日野六代目。民族主義者。父は東京帝国大学卒の元官僚、母は教師。野村秋介との出会いに影響され民族主義の道に入る。昭和53年(1978)、大日本朱光会結成。のち、12団体との協賛による国民協議会を発足させる。
抗議
―30年以上前の平成4年(1992)に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、いわゆる暴対法が施行され、21世紀に入って暴力団排除条例(暴排条例)が全国に広がり、平成23年(2011)に東京都と沖縄県を最後に全都道府県で施行されました。
阿形 私は暴対法が施行されて間もなく、免許証住所不実記載で田園調布署に逮捕され留置されました。住吉会では私が第一号です。
―?普通、失効か罰金で、逮捕はあり得ませんね。
阿形 田園調布は高級住宅街ですから、管轄署では暴排条例の逮捕の前例が少ないので、警視庁本部が直接当たるということで一斉に10人くらいに逮捕令状を出して、そのうち私を含めた6人が逮捕されました。留置所の担当者から「それ(不実記載)だけで来たんですか?」と訊かれて、「そうです」と答えると、あきれていました。一応、取調はありました。その後、銀行取引停止処分も住吉会で最初に受けました。
―そうなると、生活ができなくなりますね。
阿形 口座が作れないから携帯電話も契約できませんし、賃貸住宅も契約できません。組員は生活もできない状態になっていきます。
―理不尽と言えば理不尽ですね。
阿形 決して服従せず、闘う姿勢を見せました。そんな時に村上正邦参議院議員(故人)が主催する「司法を正す会」の勉強会で話をする機会を得ました。これを機に『週刊金曜日』や左翼系弁護士が協力していただきました。この他、社民党の福島瑞穂さんは国会前で反対演説をやってくれました。また、元日本共産党の筆坂秀世さんも協力していただき、左右関係なく協力してくれました。
そうしていると、今度は暴排条例が施行されてますます私たちに対する締め付けが厳しくなり、業界の人も憂いていました。そこで抗議団体を作ろうとなって、最初は人権を無視した組織犯罪に関する法律に反対するという運動でしたが1年くらい経って、現在の「社会の不条理を糾す会」なりました。右翼色も出さずに、イデオロギーにこだわらず、皇室を敬う方に限り登壇・演説していただくことにしています。
―人権問題だと思いますが、風当たりはますます強くなっていきますね。
阿形 暴力団という表現から反社会勢力、「反社」というあいまいな表現が盛んに使われるようになりました。この反社という選別がますます私たちと周囲を切り離す動きになっていきます。活動する中で機関誌を発行していて、この発行を支えてくれているのはスポンサーです。このスポンサーは、こちらの恫喝や圧力で協力してくれているわけではなく、純粋な支援です。ところが、警察はこのスポンサーに圧力をかけ始めました。その中に本当に親しく付き合っていた不動産会社の社長さんがいました。その方から一枚のハガキが届き、「今後お付き合いできない」という趣旨が書かれていました。
驚いて直接電話して「ハガキでいきなりは水臭いんじゃないか」と言うと、「警察がやってきて『寄付しているのか』と尋ねられて、『あの団体は一所懸命運動をやっているから寄付している』と答えると、警察が『確かにあの団体は活発に運動しているが、世話人は住吉会の幹部だ』と言うので、『それは知らなくて純粋に応援している』と。すると、『こうして住吉会の人間だと告げたのだから、これ以降お付き合いするのだったら反社と関係がある会社だと登録することになりますよ』と警告された」と言います。今後は私と付き合わないと一筆まで入れさせられたそうです。
―交友関係は断ち切られて、政治活動など言論の自由も奪われますね。
阿形 ダメだということではなく、関係者は警察から圧力がかかりますから、自ずと協力できなくなり、資金源が枯渇します。政治団体として認められても、警察OBが天下りで各企業に総務担当としていますから、企業献金は実質的に不可能になりました。裏を返せば、警察と企業が癒着して我々を排除することで、利権漁りをやっているのが実態です。
―「元暴5年条項」という規定により、組を離脱しても、おおむね5年間は組団関係者とみなされ、組員同様に銀行口座を開設すること、自分の名義で家を借りることができません。だからといって、組員歴を隠して履歴書などに記載しなければ、虚偽記載となる可能性があります。保育園の入園を拒否されたり、生命保険に入れなかったりと、組員の家族までもが不利益を被る可能性があるそうで、離脱しても社会から徹底的に排除されていますね。
阿形 私が離脱して6年くらい経って、あることで逮捕されたことがあります。ある大企業が私の知人に多大な迷惑をかけて私のところに相談に来ました。その企業の行為は明らかに犯罪行為でした。その企業は都合が悪くなると、担当者を代えてのらりくらりするので、知人が怒って何度も電話を入れました。私も同行してその企業を訪問すると、担当が代わったと木で鼻を括るような対応でした。
その時、私は名刺を交換しています。その後、知人は逮捕されました。また、知人は私にしょっちゅう電話をしていましたが、ちょうど企業に電話を入れている間に私との通話記録が残っていました。もちろん、その知人は私に迷惑をかけるような話はしていませんが、警察は「その電話で報告があっただろう」と。私の政治団体の名刺の肩書も脅迫になると、威力業務妨害で逮捕されました。
丸の内警察署の組織犯罪対策の担当刑事に「組を離脱して5年間は観察するのは分かるが、私はやめて5年を過ぎているのに、組織対策課が来ることはまだ私を組の人間と見なしているんですか」と尋ねると、何も答えられませんでしたね。「上からの指示で…あえて言えば、暴力団との共生者としてでしょうか」と苦しそうに弁明しました。そこで「私は徹底した性格ですから、やめた後は業界の人とは1人たりとも食事すらしていません」と言うと、黙ってしまいました。全く、理屈になっていないのです。
―暴力団を徹底して排除した結果、新宿・歌舞伎町などの繁華街で不良外国人や半グレといわれるグループが台頭し、治安が悪化している感じがします。
阿形 実際、新宿の街は治安が大変悪化しています。
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