社会活動としての空手道


2024年9月号 特別寄稿

国際空手道連盟極真会館 館長 松井章奎氏

国際空手道連盟極真会館館長。1963年1月、東京都出身。極真空手の創始者・大山倍達総裁に憧れ中学時代に極真会館入門。恵まれた素質と不断の努力により、わずか17歳で全日本大会に初出場し、堂々4位入賞を果たして非凡さを世に知らしめた。1985年第17回、1986年第18回全日本大会優勝。翌1987年の第4回世界大会も制し、大会三連覇を達成。また1986年には極真空手最大の荒行、百人組手を完遂。現役選手時代は俊敏にして華麗な組手から『空手界の貴公子』と称され、多くのファンを魅了した。その後、後進の指導にあたりつつ、大山総裁の下で武道哲学を学び、1994年大山総裁の死去に伴い、総裁の遺志を継ぎ国際空手道連盟極真会館の館長に就任。現在、世界の極真会館の組織活動の運営と極真空手の普及・発展を目指し、東奔西走の日々を送る。

日本の伝統文化の代表的なものとして「武道」が挙げられると思います。

空手道もそのひとつであり、現在では国際的に広く普及し、老若男女問わず世界中で多くの人々が研鑽に励んでいます。日本では昔から武道を修練する場として「道場」がありましたが、現在では「町道場」として最も多く見受けられるのが空手道場でしょう。

私が館長を務める「国際空手道連盟 極真会館」は1964年に大山倍達先生によって創設された団体です。その活動の基盤は日々の道場運営ですが、年中行事として競技会や演武会、合宿などの大会やイベントなどを開催して極真空手の普及に努めています。しかしながら、ここで申し上げたいのは、弊会は「競技団体」ではなく「武道団体」であり、同時に「社会体育団体」であるという事です。「体育」とは「体を使い運動を伴った教育」です。

日本には悠久の昔から培ってきた国際的にも尊敬を得る高い精神文化があります。これまで、「私」としての礼儀、行儀、道徳心、倫理観。それらを基に「公」或いは「社会的」には、秩序や風紀といったものが保たれてきたのですが、昨今それらの意識はある意味希薄になりつつあるのではないかと感じます。
 
これらは、以前は家庭生活や学校教育で自然に身に付いていったものだと思いますが、戦後の経済成長期以降は共働きや核家族化が進み、地域社会との交流も疎遠になっていく中で、特に子供達が社会性を身に付ける事が非常に難しくなってきている現状があります。

今は空手が日常の習い事として定着し、道場には多くの子供が集まって来ます。これは家庭や学校でなかなか身に付けることのできない社会性や他人との接し方といったものを育む場として、保護者の方々が空手の道場に期待を寄せているからでしょうし、空手道が社会に受け入れられてきたことの証左でもあると思います。

子供にとって社会生活の縮図でもあるべき学校で、いじめられないように、或いは逆にいじめをしないように、仲良く健やかに過ごしてほしいというのは、いつの時代も変わらぬ親の願いです。そこには友情や互いを思いやる気持ちが必要になってきますが、その部分を空手道の技の修得の作業の中で、まさに「戈」とそれを「止める」(=武)術を身に付け、相手に怪我をさせない、相手の技をしっかり受け止める、といった事を学んでいくのです。


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