お笑いの世界から俳優の道へ AI時代に向けた若い人たちへのメッセージ


2024年7月号 聞き書きシリーズ ─ 藤原光博氏 リットン調査団(吉本興業)

藤原光博氏 リットン調査団(吉本興業)

昭和37年(1962)大阪府出身。お笑いタレント、俳優、YouTuberであり、吉本興業に所属するお笑いコンビ・リットン調査団の1人。吉本興業所属。桃山学院大学に在学中、学生プロレスの活動がきっかけとなり、後の相方となる水野透と出会う。先に卒業していた水野にお笑いの世界に誘われ、コンビ結成。主な出演ドラマは、ノーサイド・ゲーム(2019年、TBS)-10の秘密(2020年、カンテレ)、真夏の少年〜19452020 第3話、第6話(2020年、テレビ朝日)しょうもない僕らの恋愛論 第3話、第7話、第10話(2023年、読売テレビ)、テレビとはあついものなり〜放送70年TV創世記〜(2023年、NHK)、めぐる未来(2023年、読売テレビ・日本テレビ)など多数。
(リットン調査団)吉本興業に所属するお笑いコンビ。1986年(昭和61年)1月にコンビ結成。メンバーは藤原 光博(ツッコミ担当)、立ち位置は向かって左。水野 透(ボケ担当)、立ち位置は向かって右。YouTube「リットン調査団 藤原チャンネル 藤原猥談」配信中。

お笑いと俳優の違い

大学を卒業して吉本興業に入りました。当時、係長だった大崎さん(大崎洋・元吉本興業ホールディングス代表取締役会長。明石家さんま、島田紳助を支え、ダウンタウンを見出し、吉本の会長まで登りつめた敏腕マネージャー)が、それまで売れていないダウンタウンを売り出そうと、アンチ吉本、アンチ花月と言い出して新しい笑いを創っていこうと声を上げていました。私たちの同期には木村祐一、東野幸治、今田耕司君らがいます。私たちコンビは、ダウンタウンが司会を務めるオーディション番組「心斎橋お笑い探検隊」へ出演、プロの道に入りました。

コンビを組んで約40年になります。まだ、正式に引退はしていませんが、再び出るのは相方次第です。こだわりがある相方がその気になればまた始めることになるでしょう。

お笑いをやらなくなってしばらくすると全く仕事がなくなり、ある年の年末年始に一人でテレビを観ていて、「このままだったら、俺の芸能生活は終わるかな」と思ったと同時に「自分を変えるチャンスかも」と思いました。相方に嫌々やらせても面白い笑いができるはずもありません。こちらから頭を下げるのは私にも意地があるのでできません。さて、何をやろうか。何をやっている時が楽しかっただろうと考えると、以前数回出たことがあるドラマや映画を思い出しました。

正月明けに吉本に電話して俳優部門に登録してもらいました。芸人だったらネタを創ったりするんですが、すぐに仕事が入るわけでもなく、何もすることがありません。実際やってみても手ごたえがありません。お笑いだったら下手でも何らかのリアクションがあります。俳優の場合、監督、プロデューサー、視聴者など他人の評価ですから自分でいいと思っても分かりません。俳優の世界は、その場のアドリブ、瞬発力で勝負する芸人の世界と真逆で事前に準備を重ねてあとはカメラの前で演じる世界です。俳優の世界に入って10年以上になりますが、今では自分のことを俳優だと思っています。約40年間お笑いをやってきて一つ分かったことは、自分は芸人に向いていないということでした。(笑)

確かにデビューした頃はダウンタウンをはじめ才能豊かな人材がごろごろしていました。それでも「お笑いが好きだ」と思い込んでやってきたのですが、今では俳優の仕事が楽しくて仕方がありません。毎回新しい発見があって勉強になります。配役は私に合っているものをいただくのですが、人のいいキャラクター、例えば工場長などが多いですね。演技が未熟というのもあるでしょう。いずれは悪役などいろんな役ができる俳優になりたいですね。うまい俳優の演技をじっくり見て研究しています。いつかは助演男優賞を取りたいですね。この歳になって目標があることは幸せなことです。まだ、俳優だけでは食えず清掃会社でアルバイトもやっていますが、楽しく仕事をやれています。芸人の方が食えますが、こんな人生もいいんじゃないかと思います。


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