2024年6月号 そこが聞きたい! インタビュー
街宣車、戦闘服…およそ一般の国民の右翼団体に対するイメージは、怖い、うるさいというものだろう。しかし、右翼が何を目指しているのか、知る人は少ない。右翼の本分とは何か─
河原博史氏 時局對策協議會 議長
大日本愛國團體聯合・時局對策協議會議長。同血社會長。昭和45年、神奈川県藤沢市生まれ。23歳から民族運動に参加、平成12年に同血社を結成。右翼民族派では、街宣車に依拠した従来の運動スタイルをいち早く見直すなど民族派運動のパイオニア。国内外のメディアの取材も多数受けている。虎の尾を踏むことを恐れず、時代に対応できる運動ではなく、時代を切り開いていく運動を志している。古典や国史への造詣も深い。
変わらないもの
―時局對策協議會(以下、時對恊)の七代目議長に就任し、1年が経過しました。この1年振り返っていかがですか?
河原 やっていることは変わらないのですが、時對恊の物故者に顔向けできないようなことはやってはいけませんので、全力投球の日々です。ただ、参加団体の皆さんが一所懸命活動と自己研鑽をしてくれているので、こちらも更に力を振り絞り投球せねばという感じはしています。
―時對恊は加盟する右翼団体の横断的な組織ですね。
河原 はい。運動には前提があり、なぜロシアを、なぜ日教組を抗議しなければならないのか理解するということが必要です。ただ、漫然と集まっているのではなく、門を叩いてきた人たちにその前提である思想の探求を共にし、その上で運動があらねばなりません。各団体がそれぞれ前提である思想や情念を共有し、そこで初めて結合的実体である運動となるわけです。各団体には主体性があり、独自の運動方針や様式もありますから、時對恊が統一して運動するということはほとんどなく、その前提部分を協議し理解し合うことまでです。
―右翼団体は東西冷戦時代に長らく反共運動をやってきましたが、冷戦が終結して30年ほど経ちました。右翼の運動の前提も変わったのでしょうか。
河原 結論から言えば、変わりました。国体の明徴、皇業の翼賛など我々の根本原理は設立以来変わらないのですが、戦後、左翼勢力が政党を作ったり、様々な運動を展開するようになり、我々が目的に向かうに壁となって立ちはだかりました。東西冷戦時代は先ずこれを取り除くという余計な作業が増えたわけです。これが反共運動です。
冷戦が終わって、この余計な作業が軽減された今、再び当初の目的に向かって専念できるようになりました。ただ、反共運動の必要な期間が長かったため、今なお反共気分を残す部分があることは否めません。だからこそ原点に返り、先人の教え、志操を紐解き本来あるべき右翼の本分を再認識する必要があります。私の同血社も然りですが冷戦時代或いはその後に結成された団体や参加者は直接それ以前の右翼運動を経験していないため、系譜を遡り先人による往時の運動様式、志を見直さねばならないのです。よって系譜は大切です。系譜を持たぬ団体も、先輩や先人から直接御指導を受けた人から学び取り込んでいます。これらの作業を惜しみ、時勢を追うだけ、体外政策に異論を唱えるのみの謂わば市民団体、右派系グループと呼ばれる集団は、以上のことからも右翼とは似て非なるものです。
―そうした原点回帰、再確認をするのが、時對恊の役割でもありますね。
河原 時對協だけでなく、今日暇を玩ぶことなく目標に向かい突き進んでいる、元気ある団体は凡そそうされているのではないでしょうか。
―今後の課題は?
河原 対内的には人口減少と高齢化問題への対応です。これを解決するために敷居を下げて、誰でも、遊び感覚でも務まり、多様性を重視してまで人員の獲得を目指すのは間違いでしょうね。我々マンモス世代と異なり、今は日本全体で若者のパイが絶対的に縮小している。右翼に限らず書道界、華道界、コンビニのバイトに至るまで全体的に少子高齢化になっています。そんな中でハードルを下げたとしてもどれ程の人数増加が見込めますか。仮に増員されてもそれ以前の古参、参加者との軋轢を生むだけです。
新規入部者減少に悩む高校野球部が打開策として朝練を廃止し、夏休みの合宿をやめ、多様性を取り入れてようやく9人集めても、そんなチームが他校に試合で勝利するはずがない。要するにチーム外の人から見れば何の期待も希望も持てない、チームだけの自己満足に過ぎない、存在意義を失った部活に堕ちるのです。
よってこういう時だからこそ、量より質を求めるべきなんです。少数でも今いる若者達に愛情持って育て、誤れる際には叱り、頑張った際には素直に認めて褒め、一人ひとりが二人力、五人力となれるような人物に育てる。質の向上を目指すべきです。職場で働き手がいないからといって無条件で時代の流れに媚びて多様性を重んじ、勤労意欲を育てることなく間に合わせの人数を確保して利益の産出が向上しましょうか。ハードルを下げて頭数が増えればいいということではありません。
間違いなく今日もこれからも、指導的立場にある者がやらねばならぬことは人を育てるということ。街頭でシュプレヒコールをあげるのもいいけれど、同時に見識を高めるための勉強会が必要なんです。ネット上に情報が氾濫する中で、いかに正しい見識を身につけさせるかが重要です。
―今年3月3日に右翼の勉強会で若者たちに登壇させましたね。これは非常に珍しいことだと思います。
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