祖父を語る 社会運動家・福田素顕の素顔


2024年6月号 聞き書きシリーズ ─ 福田邦宏氏 皇道日報社 主幹

福田邦宏氏 皇道日報社 主幹

昭和38年(1963)東京都生まれ。国士舘大学中退後、防共新聞社に入社。時局対策協議会6代目議長に就任し、12年間務める。

社会運動家の本領

祖父は明治から昭和にかけての社会運動家である福田素顕(狂二)です。

その次男が私の父の狂介(故人)で本紙の前身である「防共新聞社」社主を務めていました。ちなみに、伯父である進(故人)は、赤尾敏先生の大日本愛国党の城南支部長を務めながら、「防共挺身隊」を結成した人物で、この団体は軍歌を流しながら街宣する行動右翼の祖とも言われています。また、伯父は浅沼稲次郎事件の山口二矢烈士とも交流がありました。

また、浅沼と祖父には浅からぬ縁がありました。

祖父が大正時代に創刊した『進め』という機関誌の執筆者に浅沼がいました。また、祖父の提唱で設立された時局対策協議会の代表を務められた浅沼美智雄先生は浅沼の遠縁にあたります。

山口と稲沼も不思議な縁で繋がっています。また、祖父は明治37年(1904)、日本労働党を結成しますが、その後日本労農党に加入します。その後身の日本大衆党から思想的な理由で除名されます。当時は離合集散が繰り返されていました。もう一つは、お金の問題がありました。当時の田中義一内閣が左翼勢力を抑えるために左派政党にお金をばらまいていました。それを祖父が徹底的に糺弾したことも背景にあります。日本労農党は後の社会党(現社民党)の中間派を形成します。つまり、はじき出された祖父の系譜である山口烈士が、はじき出した側の浅沼を刺殺するという不思議な因縁を感じます。

祖父は、日本初の公害事件である足尾銅山鉱毒事件の重鎮・田中正造に憧れて、社会運動を始めました。島根県の田舎から早稲田大学に進学で上京し、そこで運動に触れて燃え上がったのでしょう。そして本格的に政党活動をやっていくのですが、本人は特別に主義を持っていなかったのですが、特高の分類によると、国家社会主義の「甲」に分類されたようです。本人の思想如何を問わず、右翼からは左翼、左翼からは右翼だと指弾されていました。

平成4年(1992)、祖父を主人公にした小説『凩(こがらし)の時』(大江 志乃夫著)が大仏次郎賞を受賞しました。うちに取材に来ていないのに克明に描かれていました。祖父は日露戦争時から反戦社会運動に関わりました。小説は明治41年(1908)に起きた陸軍歩兵第1聯隊集団脱営事件を軸に、軍国化の足を速めた大日本帝国と、苦難の時を迎える社会主義運動の姿を描く歴史長篇です。祖父は陸軍を脱走し中国に渡って辛亥革命に参加します。日本では二等兵ですが国民党では将官でした。大陸で活躍した玄洋社との関わりは不明ですが、現在玄洋社を研究する者が調査しています。

大正7年(1918)から祖父が暴行罪で3年間服役していた時、普通は3冊しか差し入れができないところを何冊も差し入れされたそうです。その本は国体に関するものばかりで、恐らく治安当局はどんなにひどい取り調べを受けても頑として動かなかったんですが、本を読むことで国体観を会得しました。運動の基本に国体を据えるようになったのです。

出所後、先述の政党活動を過ごして、自身で日本平民党を結党しますが、即解散命令が出ました。大正12年(1923)、進め社を創立して『進め』を創刊しました。これは地下出版だったようです。この頃のことに就いて、法政大学の労働運動を研究している教授が当時の膨大な資料を持っていて、祖父のビラなどのコピーを持ってきていただきました。これをみると、進め社は明らかに労働運動の結社でした。とはいえ、祖父は徹底した反共産主義者でした。これはどういうことか、孫の私が考えてみるに、資本家と労働者との格差が広がれば広がるほど不満が溜まります。実は共産主義、社会主義の方が格差は大きいのですが、資本主義打倒という勢力は労働者の無いものねだりを煽って革命を起こそうとしているのが実態でした。祖父はそこを看破していたのだと思います。

マルクスの『資本論』は資本主義を完全に否定しているわけではありません。ただ、マルクスは資本家が労働者の時間を搾取していると指摘しています。それでもそこまで過激な考え方ではなかったのですが、これを利用して自分たちの革命のイデオロギーに変えたのが、レーニン達でした。労働運動をやっていた祖父が反共産主義を主唱していたのに最初は疑問に思っていたのですが、祖父は主義者ではなくあくまでも社会運動家だと理解すれば、その思想を理解できるようになりました。

イデオロギーは人を洗脳してコントロールし支配するツールにしか過ぎません。そこに権力闘争が起きて、左翼陣営でかつて内ゲバが起きたのはその証左です。人間社会には良いこともあれば穢れたこともあります。その中で何が一番フラットなものが、神道だというのが我々の考えです。反共活動をやってきたのは、共産主義は独裁体制で自由がないから反共ではなく、皇室を否定しているからです。日蓮宗も皇室を否定しています。天皇も将軍も法華経に帰依しなければ国が亡びると教えています。


続きは本誌にて…フォーNET読者の会(年間購読ほか会員特典あり)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP