在特会の誕生秘話 ─兵庫県知事選挙との共通点─


2024年12月号 特別寄稿

在日特権を許さない市民の会 前会長 八木康洋

昭和48年、静岡県生まれ。茨城県在住。平成8年3月、東京工業大学工学部化学工学科卒業。平成10年3月、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻修士課程修了。平成13年3月、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻博士課程中退。在日特権を許さない市民の会(在特会)元会長。平成19年12月の在特会設立時から会の運動に参加し、平成26年12から令和5年4月まで会長職を勤める。現在、ネトウヨとして言論活動を行なっている。

在特会と兵庫県知事選の違い

私は、在日特権を許さない市民の会(略称、在特会)で平成26年12月から令和5年4月まで会長職にありました。現在はその会長職を辞し、一介のネトウヨ(ネット右翼の略称)として言論活動に参加しております。在特会に纏る話題としては、デモ活動・いわゆるヘイトスピーチ問題等々がありますが、最近のホットな兵庫県知事選挙に絡めて在特会設立時の話をしてみたいと思います。

本題に入る前に、三笠宮妃百合子殿下のご薨去に際して心より哀悼の意を表します。本来、慎むべき時ではありますが、先日投開票が行なわれました兵庫県知事選挙で斎藤元彦候補の当選確実の報があった時には嬉しい気持ちを出してしまいました。選挙戦が開始する直前から、私は立花孝志氏に注目しておりました。今回、立花氏はデマ情報によって不当に貶められた斎藤候補を守るという目的で立候補しました。そして、インターネット動画やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を駆使して、隠匿されている一次情報等を広く世間に伝え、斎藤元知事は悪くないと終始主張しました。斎藤候補に投票した兵庫県内の有権者全てが立花氏の発信を基にして誰に投票するかを決定したという訳ではないと思います。しかし、兵庫県内外の多くの人に県政の内情やマスメディアの偏向報道を気付かせ、県内有権者が斎藤候補を応援するきっかけを作ったことは間違いないと思います。この現象と在特会と何が関係あるのかと思うかもしれませんが、在特会の設立時と兵庫県知事選挙は共通点が多いのです。そのことについて時系列を追って解説したいと思います。

今回の兵庫県知事選挙と在特会の設立時で何が違うのかというと、関わる人の規模と注目されるまでに要した時間です。在特会は平成19年12月に設立されましたが、それまでインターネットの中で嫌韓発言がなかったかというとそうでもありません。当時、2ちゃんねると呼ばれた大型掲示板サイトでは平成11年の設立当初から、韓国や北朝鮮を嫌うような発言がありました。ただ、最初の頃はそういう嫌韓発言に対して、差別だとする反発の方が多かったのです。流れが変わってきたのは平成14年で、この年に日韓共催のサッカーワールドカップがあり、小泉訪朝により北朝鮮の拉致問題が顕現化しました。当時、マスメディアが捏造していた所謂靖国問題もあって、平成14年を機にインターネット上で韓国・北朝鮮・チャイナへの不信感を表明する意見が多く見られるようになりました。そして、漫画『嫌韓流』が大ヒットし、インターネット利用者の中に特定の国の民族性や反日左翼、既存のマスメディアを嫌う人が増加しました。そういう背景の中、平成19年に在日無年金訴訟の上告審があり、初代会長である桜井誠が在特会の結成を決意し、同年12月に設立となりました。在特会の活動目的は、在日特権を廃止する事で、具体的には入管特例法の廃止となります。在日特権だけを扱う市民団体という訳ではなく、外国人参政権問題やマスメディアの偏向報道等にも抗議活動を行なってきました。

これまで説明の通り、在特会に纏わる話は、関わってくるのがインターネットを主な情報伝達手段として使っている人に限られます。在特会は設立当初からインターネットによる情報発信しかしていないので、それを目にする機会のない人にまで我々の主張が訴求することはありませんでした。在特会の設立当初は、デモ活動のような大衆へのアピールを否定し、集会に会員を呼びかける程度のものでした。デモ活動の効果を否定するつもりはありませんでしたが、デモ行進で主張する内容を聞いた人が詳細まで憶えていることなどないだろうから、労力の割に得られる成果が少ないという判断でした。そして、在特会は基本的にすべてを公開するように情報発信していました。ベトナム戦争時に米国のマスメディアが深くまで立ち入り、それによって反戦運動が広がった訳ですが、そのことを特に意識をしなかったものの、そういう知識だけはありましたので、最初から隠し事なんかない方が良いという判断でした。だから、集会等活動の様子から会計、方針を巡る話し合いの部分まで積極的に表に出すようにしていました。

在特会の活動方針に変化が出たのは平成20年頃で、既にYouTubeによる動画配信が可能となっていて、さらにニコニコ動画での生中継が可能になりました。動画配信を用いれば、デモ活動の主張をインターネット上に残すことができ、生中継の映像を出すことによって、編集後の動画が何処を切り取ったものなのかを検証することができるようになりました。そこで思想的に近い他団体と一緒に積極的なデモ活動を行なうようになり、その様子を動画配信しました。活動の様子を生中継で配信する以上、当方に不都合となる事実があったとしてもそれを含めて一般公開されるので、視聴者には全体を見たうえで賛同なり批判なりの判断してもらえるものと期待していまいした。


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